コミュニケーションの天才

昨日は、個人的に参加している大隈塾次世代リーダープログラムの講演がありました。
スピーカーはキャノンの御手洗社長。
経団連会長に就任のため、今月下旬に社長交代されるので、今回が社長として最後のスピーチだったそうです。
少人数で貴重なスピーチを享受できたことは、自分にとってとてもラッキーだったと思います。

私は最近、日産・松下の企業研究をそれぞれに行った経験から、自分なりに「V字回復を実現するリーダー像」をイメージしてました。
御手洗社長は、多額の有利子負債と低い利益率で停滞する経営環境の中を社長に就任しており、その後の売上成長と財務体質の改善は、まさにV字回復と言うべきものだと思います。

御手洗社長も「V字回復を実現するリーダー像」に合致していると感じました。
第一に自らゴールを設定し、ゴールにいたるシナリオも含めて社内外に明確なメッセージを発信するということ。
第二に、経営で最重要視するものが「効率」であること。
この2点において、日産のゴーン元社長も、松下の中村社長も、御手洗社長も共通していると思います。

また、この3人の社長が時を前後して社長を退任したことに、私は時代の転換点を見出すことができるような気がしています。
日産・松下・キャノンという日本を代表する大企業において整理・統合が終了し、スリムで効率的な企業体質に生まれ変わって安定成長に入ろうとしています。
他の大企業や中小企業においても、3社の事例は変革への大きなヒントになるのではないかと思います。

3人の社長に共通する点としては、「異文化をバックボーンに持つ」ことがあげられます。
ゴーン氏は外国人なので当然のことながら、中村社長も御手洗社長も海外勤務の経験が長く、海外子会社の社長を経験しています。
日本とは異なる環境で長いビジネス経験を積んだことで、国内経験しかない取締役には見えないムダや弱点が見えたのではないでしょうか。
実際に改革を実行に移すことができたのも、国内のしがらみが少なかったことと、欧米流のビジネス哲学を身につけていたことが大きかったと思います。

御手洗社長には多くの著書・インタビューがありますが、今回の講演でも同様に、主張にぶれのない一貫した論理の強さを感じました。
どんな場面でもスピーチ原稿を見ながら話すことはないそうですね。
そのせいか、「自分の言葉で、自分の意見を話している」印象を強く受けました。

御手洗社長は「コミュニケーションの天才」だと私は思っています。以前、私の所属する大学院の教授より、御手洗社長の工場訪問に同行したときの話を聞いたことがあります。
御手洗社長は毎年すべての工場を訪問されるそうですが、必ず「この工場で自慢するものを見せてくれ」と仰るそうです。
社員は次の訪問までに、社長に自慢できるものを作ろうと自主的に努力するといいます。

話を聞けばすぐに真似できそうなことですが、このような発想の転換はなかなかできないものだと思います。
普通の社長なら、工場の問題点や改善要望を聞くところまででしょう。
社員は不満を言った当座は満足するかもしれないけれど、それだけでは積極的に努力するところまではいきません。

厳しい改革を進める陰には、社員のやる気を引き出す御手洗社長の深いコミュニケーションがあったのではないかと思いました。

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